|
1998年後半、羽田空港に初めて電車が乗り入れた。京浜急行線だ。これまでモノレールかバスくらいしか公共交通機関がなかったのだから、ようやく一人前の空港になったという感じである。私は地下鉄で泉岳寺まで行き、そこから京急に乗り換えた。空港行きの電車とは行っても普通の電車である。品川を通り過ぎすでに暗くなった都心部から次第に明かりの少なくなる羽田へと向かう。到着した羽田空港駅は真新しく明るく見えた。 少し早くついてしまったのでANAカウンター前に座ってメンバーを待つ。19時過ぎ、このメンバーにしては上出来にも数分遅れで東京組4人がやってきた。まずは保険に加入。思ったより高く5000円かかってしまった。ここで最初のトラブル。Jの買ったばかりの鍵が壊れてしまったのだ。いわゆる南京錠であるそれは、鍵を開けると円弧になった部分が勢いよく発射される。閉めてしまえば使えると言うことであきらめる。搭乗までの時間は夕食だ。カレー店があるのだが20時閉店で一足違い。向かい側のうどん屋へ入る。T野は早くもビールだ。うらやましいが、ここは我慢する。 カウンター前に戻り荷物を預けて搭乗券を受け取る。搭乗券はくじ引きしたのだが育が元々の窓際を引き当てる。相変わらずどうでも良いところで運の強いやつである。21時20分発の975便は羽田と関空の間だけだからわずかな時間だ。飛び上がり飲み物が配られすぐに着陸というあわただしいスケジュール。我々は関西空港に降り立った。ほかのメンバーは関空が始めてとのことで、珍しくJまではしゃいでいる。 電車では不便なのでタクシーで田尻町のホテルユタカウイングまで。空港大橋の利用料が高いので1台5000円弱かかってしまった。のっけからよく金が出ていく。ホテルのロビーでNと明朝の集合を電話で相談。ホテルのバスでは時間が微妙なため電車で行くことに決定。元ラブホテルという部屋へチェックイン。閉める直前の大浴場では、シャワーのお湯がぬるくなりつつあって慌てる。T野はいつも通り最後にあがったが、いつもよりは早く出てきた。最後に部屋でちょっとビールなどを飲み、早々に就寝。Jの部屋は女性のすすり泣きのような風の音で眠りづらかったらしい。過去に悪いことばかりしてきたので恨みがたまっていたのだろうか。
5時40分に起きる。旅行でもなければなかなか起きられない時刻だ。ロビーに全員集合して出発。まだ夜明け前の田尻町は猛烈な寒さである。ソウルに備えて防寒着は揃えてきたが、ここではまだ身につけていないから顔が切れそうに痛い。とぼとぼ民家の間を歩き線路を右に10分弱で吉見ノ里駅に到着。こんなに朝早いのにちらほら他のお客もいる。各駅停車に乗り込んだら席はほぼ埋まっている。朝早くから出勤する人も多いようだ。泉佐野駅では一足違いで空港行きが出てしまった。寒いので階段を下りて改札前で次の列車を待つ。Jが、はねたままの髪の毛に気づいて一所懸命なおしている。次の空港行きの電車に乗り込んだら、そろそろ空が明るくなり、景色が見え始める。空港大橋から見た大阪湾はかなり荒れている。育と千絵は子供のように喜んで座席にあがって眺めている。普段会社の窓からいくらでも見ているはずなのに。大阪の海は悲しい色でもしていたのだろう。 関西空港駅に到着し、エスカレータで国際線出発ロビーのANAカウンタへ。Nたちが見あたらないので電話してみたら、その次のコーナーにいた。N夫妻とY木も合流してソウルツアーメンバーが勢揃い。いつものようにNが代表して手続きを行う。Y木が荷物用のシールをT嬢の背中に貼っている。気づかずT嬢は愛嬌を振りまいている。見慣れた風景をぼけぼけした空気が包み込む。帰りの航空券をここで手渡され、ちょっと緊張する。失くすと帰れなくなる。待ち時間に空港内の英国屋で朝食をとることにする。だいたいのメンバーはカレーとコーヒーを頼んだが、Y木は甘そうなワッフル。朝っぱらから気色悪いものを頼むやつだ。おまけにチョコレートをこぼしてNの持ってきたガイドブックにたらしてしまう。こぼすのはT野の専売特許ではないらしい。カレーはまずかったものの、コーヒーはいける。飛行機は禁煙だろうからと煙草を吸いだめしておく。
|
|

機内食
|
いよいよ荷物検査を受けて搭乗口へ。モノレールに乗るときに外気が吹き込んできて今日の寒さをもう一度実感させられる。NH171便は9時15分離陸。ソウルへ向かって北西へと進路を向けた。 飛行機が水平飛行に移ると食事だ。おにぎりとイカ明太、ごぼうサラダなどだ。ビールは見送り。入国用の書類を書き込んでおく。早起きしたのでうつらうつらしているうちに着陸の時刻が近づいてきた。高度を次第に下げていくので街の風景を見ることができるが、日本の風景とさして変わらない。ほどなく機体は金浦空港に着陸した。
|
|
入国審査も無事済んでソウル市へ。千絵・J・T野は予想通り書き間違いがあって引っかかったらしい。T野はいつものことだがJまで引っかかるとは間抜けなやつである。お金は3万円両替して、30万ウォンあまり受け取る。窓口には1万円セットとか2万円セットとか用意されていて手早い。財布がいっぱいになって大金持ちの気分である。ロビーに出てくると現地係員が出迎えてくれる。ミョンちゃんと呼んでくれとのこと。その呼び方ではちょっと年齢とのギャップを感じる。日本語はイントネーションがおかしいものの十分通じる。育のあやしい日本語に慣れている我々には簡単に理解できた。ロビーを一歩出ると今朝の大阪の寒さなど問題外の強烈な寒さに襲われる。ミョンちゃんの話では韓国もこの冬一番の冷え込みとか。肌がきれいになると言われても、寒いのはいやである。バスに乗り込み漢江の南側を東へ進む。オリンピック道路というやつで5車線ある。「漢江の奇跡」と言われていた頃に造られた訳だから立派な道路である。橋を渡ると川中島。大阪の中之島と同じように行政機能がこのあたりに集中しているらしい。
|
|

トッポギ
|
途中で免税店に立ち寄る。頼まれていたシャネル5番を購入してしまったら、あとは興味がないので暇を持て余す。無料のコーヒーがあったのでY木と飲みに行くがひどくまずい。外に出てトクポギを食べるたらこれが非常にうまい。値切りもしなかったためか、天ぷらをサービスにつけてくれる。N夫妻がイカ、Y木とJがたこ、T野と僕が野菜。これがとてもうまいのにたったの2000ウォンである。スープも一人に一杯ずつ行き渡るようにおまけしてくれた。
|
|
再びバスに乗り込んで市内を走る。窓から見える風景では、1カ所に同業種の店が集まる傾向のようだ。随分渋滞している中を走って豊田ホテルに着くが、部屋が用意できていないとかでチェックインは延期。ここで厚着するつもりだったのに計画が狂ってしまった。荷物だけ預かってもらう。ミョンちゃんがバスで送ってくれると言うので地下鉄駅付近までつれていってもらった。バスから降りるとまたまた強烈に寒い。地下鉄に乗って1駅プラス1駅。東大門市場の近くで降りる。市場内に入ってみると食い物のにおいが充満していて胃を刺激される。きょろきょろどちらを見ても全部うまそうだが、とりあえずは見て回ろうと言うことで進んでいく。海苔の店があって、試食させてもらうとこれがうまい。しきりに進められ何人かが買い求める。私も後で土産に買うことにする。ちょっと戻って韓国お好み焼き(パジョン)を食べる。普通は手で食べるものかも知れないが、頼んで爪楊枝をつけてもらう。これを皆で一口ずつ。Y木は豚足を頼んで足1本出されてしまい、喰いきれずに立ち往生している。天ぷらの店では色々おまけを放り込んでくれる。たいていの店は前にベンチを置いてあるので座って食べることができる。ひとしきりつまみ食いを終えて、餃子の店に入る。ここは屋内の店なので寒さをしのげる。スープ餃子みたいなものを頼んだら10個くらい入っていて満足である。妙な味のお茶がテーブルに置いてあった。おなかが膨らんだので余裕を持って歩き回る。市場には天幕みたいな屋根が着いているのだが、すきま風が入ってくるのでやはり寒い。天幕の切れ目ではいっそう厳しい風が吹く。値段がウォンだから数字だけ大きく見えてぎょっとするが円に置き換えて考えるとどれもこれも安い。あちこち歩いてみると車窓から見たときと同じように業種ごとに店が固まっている。道具屋筋みたいなのもあって、是非色々買いたかったのだが帰りの荷物を考えて思いとどまる。寒さには慣れるどころか足の感覚が失せてきた。市場の中をちょくちょくオートバイが通り抜けていく。それも荷物を積んだ大きなものだ。これで器用に角も曲がっていくのである。市場の通り道は決して広くはない。しかも通り道にまで荷物ははみ出しているし、通りの真ん中あたりに荷を広げて売っているところもある。よく事故が起こらないものだと感心した。
|
|

いろいろ食べる
|

市場の様子
|

餃子
|
|
一通り市場見物に満足したので地下鉄でロッテデパートの免税店へ。外に面しているエレベータがなかなかやって来ず、凍えそうになる。おまけに満員で二手に分かれて上ることに。残った私はペンギンの気分である。まずは10階の免税店に入ったが、あまり興味がわかないのでぶらぶらするだけだった。中のエレベータで地下の食料品売場に降りてみると、うまそうなものがいっぱい並んでいる。T野やNは盛んに試食してまわっている。すごい気力である。無気力チーム、すなわちY木と私は少し離れて喧噪をながめていた。 再び地下鉄に乗る。地下鉄の5000ウォンチケットがなかなか減らない。運賃が安いのだ。駅から歩いてミョンちゃんが予約してくれていた焼き肉屋を探すが見つからない。どうも行き過ぎたようなのでガソリンスタンドで聞いてみる。すると親切にも店が分かる位置まで案内してくれる。焼き肉屋へ入ると暖かくてほっとする。ここは炭火でやっていてなかなか本格的である。カルビとロースを頼む。当然肉ははさみで切る。手際もなかなか良い。最初に頼んだ分は瞬く間になくなっていく。並べられているキムチも食べてしまうとすぐ追加を持ってきてくれる。更にカルビを追加するとY木が腹一杯でギブアップに。最後のビビンバに至っては一口食べただけで残りは全部私がいただく。
|
|

南大門市場
|

牛カルビ
|

石焼ピビンパ
|
|
ホテルに戻って部屋割り。N夫妻・JとY木・育千絵・T野と私という4部屋。早起きと歩き回った疲れからベットに倒れ込むように寝てしまう。後から聞いたら女性陣は深夜のバーゲンセールに行って服を色々買ってきたらしい。まったく女性の買い物好きパワーはすごい。普段は女性らしくないメンバーなのに。
|